【完】ある日、恋人を購入した。


…………


その後S.Shopを後にすると、俺は車に戻ってハンドルに体を預けた。

エンジンもかけない…寒い車の中で、俺は友香のことを頭で思い浮かべる。


いずれこうなることは、頭の何処かで最初からわかってはいた。

それにシュウともそう約束はしたし、それなりの覚悟はしてるつもりだった。


けど…



「はぁ…」



さっきから何度も繰り返し出るため息に、寒さも感じない体…。

寂しさや悲しさだけが心に残って…だからか体が動こうとしない。




俺は昔から、両親に“金で買えないものはない”と何度も教わってきた。

幼い頃から金に不自由はしなかったし、欲しい物は何でも買ってもらえた。

そして、そんな両親は今俺が働いている会社のトップで。

会社での地位・高級マンション・この車…。

大人になった俺は、両親に教わった通り欲しい物は全部買った。欲しい地位もすぐに自分のモノになった。


ただ、数年前までのあの頃…

どうしても、どんなに努力をしても、どんなに金を用意しても…自分のものにできない存在があった。



それが…“人間”だった。