なのに…何でだろ。
腕が、あたしの両腕が動かない。
声が、出ない。「離して」って言えない。口が開かない。
そして、その間にまた重なる唇…。
でも、二度目のキスのあと、あたしはやっと声を振り絞って…言った。
「…ったい、やだ」
「?」
「あたしは、尚叶くんとしかやだっ…!」
あたしは自分に言い聞かせるようにそう言うと、また神崎くんを突き飛ばして、その場を後にする。
…唇に残る感触。
きつく抱きしめられた体。
ストレートすぎるプロポーズ。
全てが、体全体に残っていて離れない。
何で、動かなかったんだろう。
何で、神崎くんとキスをしてしまったんだろう。
あたしは自然と溢れ出てくる涙を拭いながら、誰も居ない廊下を走った。

