【完】ある日、恋人を購入した。


聞きなれたその声に、あたしは一旦スマホの画面から目を離して後ろを見遣る。

あたしに声をかけて来たのは、やっぱり神崎くん。

あたしは彼を見るとすぐにスマホに目を戻して、言った。



「なに?」



…せっかくの、尚叶くんとの大事な時間なのに。


あたしが素っ気なく聞くと、神崎くんがあたしの隣に並んできて言う。



「どう?あれから思い出した?」

「?」



その急な言葉にあたしは一瞬頭の上に?を浮かべるけれど、その後すぐにその言葉の意味を理解して、答える。

彼が言っているのは、尚叶くんとの過去のことだ。



「…ああ、思い出したよー」

「!」

「長い間全然わかんなかったけど、昨日やっと思い出した。尚叶くんって、バスの中で会った親切なおにーさんだったんだね」



あたしはそう言うと、そのスカッとした心に思わず笑顔を浮かべる。

思い出して本当に良かった、と。