でも、あたしのそんな言葉に、尚叶くんは何も言わない。

…もしかして、やっぱり結構怒ってるのかな…とあたしが少し顔を上げると、そこには何故か顔を赤くしている尚叶くんがいて。



「…え、ど、どうしたの!?」



あたし、今そんな恥ずかしいこと言ったかな!?


尚叶くんの思わぬその表情にそう思って今の自分の言葉を思い返していると、その時尚叶くんが言った。



「いや、だ、だって友香…」

「?」

「俺とするの…嫌じゃない、とか言うから」



……嬉しくて。


そう言うと、より顔を赤くさせてあたしから顔を背ける。

「嬉しくて」の言葉は頑張って聞き取れるくらいだったから凄く小さな声だったけれど、

でも…夕べあんな展開にさせといて今更そんなことで照れる!?


あたしは声には出さないけど、心の中でそう突っ込んでみる。


だけど、少しヒヤリとしたけれど、結局こうやって仲直りできたわけだし、あたしはもっと尚叶くんを好きになった。

そしてそんな彼に、「また来ようね」って言うと、彼は優しく微笑んで頷いてくれる。


あたしは何年ぶりに会ったその“おにーさん”の隣に並ぶと、やがてその旅館を後にした…。