【完】ある日、恋人を購入した。


ありがとう。


そう言いかけて、だけどあたしは思わず言葉を詰まらせる。

だって、それと同時に今一気に蘇ってきた過去の記憶に、頭の中が邪魔されて…。



「…友香?」

「…、」



尚叶くんが、そんなあたしに首を傾げるけれど。

その間に、あたしの頭の中では…消えていた過去がフラッシュバックされていく。




“ねぇ、ちょっと”

“ねぇってば。おにーさんお金貸して?”


“…断る”

“ええ~!?”


“…今度返すって言われたって、何か怪しいし”

“そんなことない!ちゃんと返すよ”

“ここは正直に、あの運転手に謝れば?”


“運転手さーん。いま彼氏がお金出してくれるから、ちょっと待っ、”

“先ほど頂きました。またのご利用を、お待ちしております”


“お、おにーさんっ!ちょ、待っ…待って!!”


“ありがと!”




「…!!」



あたしはやがて全てを思い出すと、思わず尚叶くんの目を見つめて…呟いた。



「お…」

「?」

「…おにーさん…」