【完】ある日、恋人を購入した。


尚叶くんの言葉に内心あたしはドキドキしながらそう返事をすると、

平気なフリをして歯磨きをしに行った。

ちょっとだけ一人になろうと洗面室に入ったのに、同じことを考えていたのか、尚叶くんも後ろからやって来る。



「あれ、どうしたの?」

「うん?いや、俺も歯磨き」

「あ…そっか」

「?」



少しビックリしてあたしはそう言ってしまったけれど…

ああ…なんだかいざとなったらあたしの方が緊張しちゃってるな。


あたしはそう思うと、赤くなってしまった顔を隠すように、歯ブラシを加えたまま洗面室から離れた…。






…考えてみたら、あたしだってこういう展開になるのも有唯くんと別れて以来、三年ぶりなわけで。

今まで散々、「尚叶くんだから」と平気でからかってみたりもしていたけれど、

今になってみればあたしの方が余裕なくなってきてるし。


…いや、尚叶くんが、実際どう考えているのかはわからないけど。



あたしはそう思うと、歯磨きが終わった直後にチラリと尚叶くんに目を遣ってみた。


…ああ、けど、わかんない…。