【完】ある日、恋人を購入した。


「いや、友香は払わなくていいよ」

「え、」

「旅行は、俺が勝手に連れて来たんだし。友香に楽しんでほしいから」



尚叶くんはそう言って、あたしが手に持っている財布を、あたしの方へと押しやる。


え、でも!

そんな…それじゃ尚叶くんに悪いよ!


尚叶くんは「いらない」と言っているけれど、あたしはそれだと何だか尚叶くんに申し訳ないし。

それにこの旅館、なんか高そうだ。

いくら尚叶くんが一方的にあたしを連れて来たとはいえ、全額払わせるのは…悪い。


でも、あたしがそう思って納得がいかないでいると、尚叶くんが言った。



「気にすんなって。ほら、この前の…お詫び?的なさ」

「…お詫び?」

「うん。ほら、途中で飲み会すっぽかしたから」



だから、払わなくていい。


なんて、尚叶くんは全くお金を受け取ろうとしない。


まぁ、お詫びは…わかる気もするけど。

でもさ、それじゃあやっぱり悪いな。



「わかった。じゃあせめて一万くらいは受け取ってよ。ほら、」