「え、」
そう問いかけると、少し首を傾げる。
…ああ、聞こえてたのか。
まぁそりゃあ、普通の大きさの声で話してたら、聞こえていても可笑しくないか。
…どこまで聞こえてたんだろう。
あたしはそう思いながらも、元カレからの電話であることが言えなくて、咄嗟に誤魔化す。
「あ…うん。友達から電話があったから」
「…そうなんだ」
「それより、温泉すっごく気持ちよくなかった?何種類かあったから、あたし結構迷っちゃってさー」
「…、」
明日の朝も入りに行こうかなー。
なんて、そう言いながらまた旅館の案内を見る。
でもそれもすぐに閉じると、あたしは何だか浮かない顔をする尚叶くんに気付かずに、言った。
「あ、ねぇ尚叶くん」
「うん?」
「そう言えば、ここ宿泊費いくらだった?」
払うよ。
しかし、あたしがそう言って鞄から財布を取り出すと…

