【完】ある日、恋人を購入した。


あたしは、尚叶くんの後ろ姿に向かってそう言った。



「…、」



あたしがそう言った瞬間、尚叶くんの肩が微かにピク、と反応する。

そしてまた、ゆっくりとあたしの方を振り向いて…



「…ま、またソレ?」



と、顔を赤くした。


…うん。もう何度か言ってるけどね。

でもまだ、尚叶くんは叶えてくれたことがないよね。


ワガママだって、わかってるけどあたしはまた尚叶くんの背中に頭を預けて言う。



「…お願い」

「…」



シュウさんからされたキスを、忘れたいの。

まだ唇に残っている感触を、尚叶くんのそれで上書きしてほしい。


あたしが尚叶くんの背中の服を右手でぎゅっと掴んでいると、そのうち尚叶くんが言った。



「………いいよ」