だけどあたしはそれを目撃したあと、尚叶くんを見失わないように、ベンチから立って尚叶くんに声をかけた。
「“尚ちゃん”」
わざと、さっきの女の人の呼び方で。
あたしがそう呼ぶと、当の尚叶くんはすぐに反応して…やがてあたしの方を見た。
「…友香…」
そして尚叶くんは呟くようにあたしの名前を口にして、驚いたように目を見開く。
…その反応、想像してた通りだ。
でも何か、今はフクザツ。色んな感情が交じってきてて。
「…何で?今日、逢う約束してたっけ?」
尚叶くんはあたしの姿を見てそう言うと、独り首を傾げる。
…もー、わからないかな。
せっかく逢いたくて逢いに来たのに。
だからあたしが、「してないよ」って答えると、「じゃあ何で?」って言葉が返ってきた。
…それ、女のコに言わせる?
「……だって、逢いたかったんだもん」

