【完】ある日、恋人を購入した。


そう言うと、チラリとあたしに目を遣って悪戯な顔をする。

その時にふと目が合って、その気まずい言葉と目にあたしは視線を背けた。



「…」



だけど、神崎くんの話は止まらない。



「…二十歳になったばっかの時だっけ?

クリスマスに俺がトモに指輪プレゼントしたら、気に食わなくて“ネックレスがいいー!”って言ってたよな。

そのあとスゲー喧嘩になったっけ。お前覚えてる?」


「…、」



神崎くんがそう言うのを聞くと、あたしの頭の中でその時のことが鮮明に蘇る。


…憶えてるよ。

忘れるわけない。

それに…その時貰った指輪だって、本当は未だに……持ってるし。


だけどあたしは、すっかり忘れたフリをした。

もうあたしには尚叶くんがいるし、それに「悔しいから」。



「……憶えてない」

「え、ひでぇ」

「しょーがないでしょ。忘れちゃったモンは」

「…」