あたしは雑巾を手にとると、有唯くんとは別の棚を掃除しだした。
「あれ?やんの?」
「…当たり前。あたしだけ休んでるわけにいかないし」
「…へぇ。トモ変わったねー」
神崎くんはそう言うと、可笑しそうに少し笑って見せる。
付き合っていた時の“有唯くん”は、尚叶くんとは違って強引でなんでもリードしてくれるような“俺様系”だった。
キスしたい時にキスをする。
自分に嘘はつかない。自我が強い。
だからあたしとも似てる性格だし、喧嘩もいっぱいした。それに…別れも、突然来た。あの日は。
『ごめん。俺、他に好きな奴ができた』
…そう聞かされて、別れ話をされた時はあたしは泣いて“有唯くん”にすがりついたっけ。
懐かしいけど今はあんまり思い出したくない。
しかしあたしがそんなことを思っていると、ふいに神崎くんが口を開いて言った。
「…昔のトモは、あんなにワガママだったのになー」
「…?」
「自分が嫌いなことは絶対にやりたくないし、いっつも俺に甘えてばっか。
……人混みでチューすんのも何回お前から迫られたかな」

