『ツバちゃん、どこいきたい?』


そう言ったのは、私の幼なじみの神無月楓くん。私の大好きな人。


「ツバ、金木犀の公園に行きた~い‼」


そして私、如月椿。金木犀とプラネタリウムが大好きな小学4年生。



今日は久しぶりに遊べる日。
カ~くんは体が弱くて、
滅多に遊べない。

でも最近は調子がいいみたいで、
いつも以上に元気だった。

「カ~くん、大丈夫なの?」

『僕は大丈夫だよ!行こ?』

カ~くんはそう言ってニコッと笑った


私たちはカ~くんの家の近くの公園に向かった。
その公園には私の大好きな金木犀の木がある。今はちょうど満開の季節で、公園には金木犀の香りがふんわりと漂っていた。

「いい香りだね~」

『そうだね~』

金木犀の香りが眠気を誘う

『眠くなるね~…』

「うん。そろそろ帰る?」

『まだ来たばっかりだよ?』

「カ〜くんの体が心配だから…また遊ぼうね!」

『うん!』


次の日。
カ~くんは学校に来なかった…
私は学校が終わってからカ~くんのお見舞いに行った。

ピンポーン…

扉の奥の方から返事が聞こえてきて、
ガチャッとドアが開いた

出てきたのはカ~くんのお母さんだった
私はあいさつをしてカ~くんの部屋へと向かった

コンコンッ…

『は~い…』

「カ~くん?大丈夫?」

私は心配そうにドアを開けて覗いた

『ツバちゃん‼来てくれたんだ~』

カ~くんは元気そうだった

『大丈夫だよ~心配かけてごめんね』

「ううん、私こそごめんね」

『どうして謝るの?』

「私が公園行きたいなんて言ったから」

私がそう言うと、カ~くんは困った顔をして笑っていた

数分後…

「カ~くん、私もう帰らなくちゃ」

『そっか~また、遊びに行こうね!』

「うん!」

私はカ~くんに手を振って、お母さんにあいさつをして帰った


あれから1週間…
カ~くんは元気そうに学校に来ていた。

『ツバちゃん、今日遊びに行こ~』

「体調、大丈夫なの?」

『うん!』

カ~くんは満面の笑みで答えた

放課後。

カ~くんのリクエストで
私たちはプラネタリウムに行った。

「カ~くん、どうしてプラネタリウムに来たかったの?」

『ツバちゃんプラネタリウム好きでしょ?だからだよ』

そう言うとカ~くんは一瞬寂しそうな顔をした

「カ~くん?どうしたの?」

『最後だから…』

私にはその言葉の意味が分からなかった

「最後…って?」

嫌な予感がした…

『僕…引っ越すんだ…』

「いつ…?」

私は声を震わせて聞いた

『明日…』

「どうして言ってくれなかったの…?」

『ツバちゃんとは笑顔でお別れしたかったから…』

私は泣き崩れた

『ツバちゃん…』

あまりにもいきなりの事で頭の整理が出来なかった

大好きな人との最後のプラネタリウム…
なのに涙で星が歪んでよく観えなかった