4歳のときには子亀に勝負を挑んで踏み潰されて内臓破裂。5歳のときには冒険に出ると言って飛び出していったら山賊に誘拐されて売られそうになり、6歳のときにはデカイ鳥に丸呑みにされ、7歳のときには迷宮でヤバイ魔法陣を踏んでいきなりボスの目の前に飛び出てグシャグシャにされた。

 ミルトゥワに着いてからは少なくなったけど……ああ、9歳のときにはローズマリー陛下に撲殺されかけたりもしたな……。

 ちょっと思い出すだけでこれだ。細かいものはもっとある。いつも巻き込んでしまうリィには随分怖い思いをさせた。俺が死にかけるたびに「シンをたすけて」と泣き叫んでいた。自分も危ないのに俺の心配だよ。

 だからこそもっと兄らしくしっかりしないと、という意識も芽生えたんだけど。

 同じ経験から、リィは俺を守ろうと思ってくれたのか。……なんかゴメン。

「私が、シンを守る」

 静かに、だけど強い意思を秘めた口調でそう言うリィに、俺は複雑な気持ちになる。

「いやー……うん、それは有難いんだけど、それは兄ちゃんにとってはあんまり嬉しくないというか……や、嬉しいよ? だけど……。リィは俺の後ろにいろ。俺がお前の盾になって、守ってやるから」

 そう言ったら、リィはじっと俺の顔を見つめた後、顔を正面に戻して膝を抱えるように座った。

「ふうん……そう。そっか……」

 眠そうな目で虚空を見つめる横顔は、なにか思案しているようだった。

「なんだよ」

「……ううん、べつに。……もう、寝るね」

 リィは俺の方に身を寄せて、頬にキスをしてきた。

「おやすみ」

「ああ、おやすみ」

 俺もリィの頬にキスを返すと、軽い足取りで自分の寝室に消えていく妹の背中を見送った。


 ……うーん、なにか思いついたんだろうか?

 俺にはリィの考えていることがイマイチ解らない。