「うん、みんな、ありがとう」

「……手紙、書くね」

 みんなに挨拶をすると、両親が離れていった。魔法陣の外に出て、手を繋ぐ。それに倣い、シンとリィも手を繋いだ。

 魔法陣に両親の魔力が注がれていくと、ふわり、と風が舞った。碧色の光が溢れ、シンとリィの姿を包み隠していく。

 幾度となく通ってきた星の道。

 そこを通って、初めての世界へ旅立つ。


「行ってきます!」


 薄れていく景色に何度もそう叫びながら、小さな光の瞬く暗闇の中へ吸い込まれていく。そこは宇宙空間なのだろうか。しかし息も出来るし、何億光年も離れているはずの惑星間を、数歩で行き来出来てしまう。それが通るたびに不思議だ。

 足を踏み出すたびに、ふわりと身体が浮き上がる。2人は手を繋ぎながら、ふわり、ふわりと跳ねていく。

 何歩目かの着地で、突然に景色が変わった。すうっと、一面に緑が広がる。思い切り息を吸い込んで、濃い緑の香りにほっとする。ミルトゥワと似たような匂いだった。だから“相性がいい”のか。

 太陽の光でキラキラ光る緑の下に、煉瓦敷きの道が続いている。ここを辿っていけば良いだろうかと、2人は歩き出す。

「ちょっとドキドキしてきた」

 両親のいない旅は初めてだ。親離れしたばかりの少年は少し緊張気味。

「……うん」

 リィもこくりと頷く。その目には涙が膨れ上がっていた。

「うわっ、お前、なに泣いてんだよ!」

「……泣かない。大丈夫」

「……寂しい?」

「……ちょっと」

「うん……俺も。……でも、大丈夫だ。リィには俺がついてる。俺にはリィがついてる」

「……うん」

「行こう!」

「うん!」