麗しき星の花

「リィ、契りってなんだ?」

 その問いに、リィはこてん、と首を傾げた後、繋いでいるシンの手の甲をぎゅう~とつねった。

「いっでええええ!」

「……ちぎり?」

「違う! それ絶対違う!」

 痛みに涙目になるシンに、あちこちから鈴の音のような笑い声が響く。

《そのような言葉も知らぬ子どもに、世界最強の男を倒すなど無理な話だ。諦めろ》

「なんでだ?」

 シンが言う。

「俺たちが半人前だからか」

《そうだ》

「……私たちは半人前。でも……」

「1人で駄目なら、2人でやる。力を合わせる」

 多くの精霊士が精霊のすべてと契約することは不可能だというのに、ここには世界中すべての精霊、その女王が集まっている。

 それに全員と契約出来ても、行使出来る力はどの属性かに偏るのが普通だ。なのに2人はすべての力をまんべんなく操れる。ここに女王が現れたときから、2人にはその確信があった。だから手を取り合って戦えば不可能はないはず。

「俺たちには俺たちの意思がある。望まないことにただ従うだけなんて、ごめんだ」

 そんな強い意思を込めた瞳で、女王たちを見上げた。

 女王たちは目を細める。

 小さな子どもたちの目に宿る、強い心。

 ──受け継がれているのだな、と思う。



《よかろう》

 改めて2人に対し、声がかけられる。

《我らを喚ぶに値する高貴なる血を持つ皇の子、エレメンタルすべてを身に宿せる心の持ち主よ。そなたらと真名(まな)を交わし、契約としよう》

 ざわ、と神木が揺れる。それに共鳴するように、色が明滅しながら神木から放れていく。シンとリィの頭上に集まったそれは、滝のように勢いよく降ってきた。