麗しき星の花

「そう、私の御祖父様の代だ。……リディアーナ様が首謀者に仕立て上げられた、あの、忌まわしき事件」

 膝に乗せているリィの手が、カタカタと震えだした。それに気付いたシンが、その手をぎゅっと握ってやる。

「そのせいで君たちの母上を苦しめてしまった。君たちの御祖母様であるシャンテル様も……犠牲にしてしまった。魔王復活の咎も皇家にこそある。皇家は先々の代までそのことを謝罪しなければならない。そして、2人の血を引く君たちを、全力で護る義務がある」

 ルドルフは紫暗の瞳に強い決意を宿し、2人を見た。

「異世界へ行ってくれ。安全な地で、どうか、しあわせに暮らして欲しい。それが私たちに出来る、君たちへの償いだ」

「そんな……俺たちは、関係ない……」

「そうだろうか。君たちは知っているはずだ。今でも苦しんでいる人がいることを。それを見て君たちも苦しんだのだろう」

 そう言われ脳裏を過ぎるのは、幼い頃に見た母の姿だ。

 銀の月明かりに光る、たくさんの、涙の粒。

「すまない」

 紺色の頭が、テーブル擦れ擦れにまで下がる。周りにいる給仕たちは何事かと顔を見合わせている。

「ルー、やめろよ、お前が悪いんじゃないだろ」

「皇太子とは、個人ではない。……個というものは、存在しないんだ。ここで起きたことは私の罪でもある。ヴァンガード、君にも」

 ルドルフは後ろに控えるヴァンガードを振り返る。

「君の御祖父様にも謝罪を。皇家の抗争に巻き込んでしまった」

「……祖父のことは、彼の立場からは当然のことでした。皇家に身を捧げたことを誇りに思っているでしょう。ですから、私のことにまで気を回さなくて良いのですよ、殿下」