目を細めてクードを送ったフェイレイは、懐かしい顔を思い出した。

「鷹雅(おうが)、元気かな」

 クードの黒い翼、そして黒髪と赤い瞳は、異世界で出会った友人の姿を思い出す。大妖怪鴉天狗という、ミルトゥワでは聞かない異種族の少年を。

「鷹雅に初めて会ったとき、魔族かと思ったんだよな」

 だから彼に、15年前にクードに向けた言葉と同じ台詞を言った。「もうあんたたちとは戦わない」──と。けれどもすぐに魔族ではなく違う種族だということと、そこが違う世界だということに気付いた。

 あの世界の友人たちは、みんな元気だろうか。

 子どもたちをあの世界に送り込むため、“星を繋いだ”ときに橘の現当主の顔は魔法陣を通して見た。

 子どもたちを預かって欲しいということと、お互い元気でやっているという報告は出来たけれど、当主以外の橘家の兄妹たち、雪の妖怪、そして他のたくさんの友人たちは元気だろうか──。

「会いたいな」

「うん。……この子たちに、ちゃんとご挨拶させないとね」

 リディルは愛しげに子どもたちの頭を撫でた。


 今は自分たちに重い役目がある。

 けれどもきっと時間を作って、またあの世界に遊びに行きたいと思う。

 あの賑やかな面々と昔話に花を咲かせ、笑いあいたい。

 その光景を思い浮かべ、フェイレイとリディルは顔を綻ばせるのだった。