荘厳な鐘の音が街中に響き渡る。

 星暦2060年、秋。西暦の方では春であろう、この良き日。

 ミルトゥワの星都であり皇都、ユグドラシェルの皇城内にある神殿は厳かな雰囲気に包まれていた。

 高い天井の神殿内の両側に、白い法衣を纏った神官たちが列を連ねている。彼らの前には更に大勢の着飾った者たちがずらりと並ぶ。それを神殿入り口から見る、二組の男女がいた。

「まさか、結婚式までリィと一緒になるとはな」

 燃えるような赤い髪に深海色の瞳を持つ青年、シンが苦笑した。

 彼は今日、黒地に金の刺繍が施された詰襟の服に、同色のマントを左肩に羽織っていた。これは皇都における身分のある者が正式な場で着る衣装であり、マントに金糸で刺繍された翼を広げた不死鳥と王冠の紋章は皇家に連なる者の証だ。

「生まれた日も、異世界に旅立った日も、学校の入学式、卒業式も、みんな一緒だね。……お仕事があるから仕方なかったの……にゃんにゃん先生たちの都合もあったし……」

 腰まで長くなったふわふわのハニーブラウンの髪を結い上げ、白いベールを被ったリィはチラリと隣の兄を見やる。ドレープのたっぷりついた白いドレスには、桃色の花があしらわれている。

 中学生の頃はほとんど差がなかった身長も、大人になる頃には随分開いた。もう見上げないと視線を合わせられない。

「いいじゃねぇか一緒で。俺、こんなとこを一人でエスコートして歩く自信ねぇからな。緊張して転びそうだよ!」

 いつもの弁髪はそのままに、シンと同じ格好をしている霸龍闘。彼はズラリと並んだ偉そうな人たちを前に少し萎縮していた。