それを見る子どもたちの顔は驚愕に満ちる。

「まさか……」

「……動ける、の……?」

 確かに自分たちは未熟だ。女王の力を完全に引き出すことは出来ないだろう。それでも、不完全ながらこれは女王の力だ。人間に耐えられるわけがないのだ。

 なのに歩いてくる。

 酷くゆっくりではあるが、確実に前へ、前へ。シンとリィの元へ、フェイレイは近づいてくる。

《良く見ておくのだな》

 風の女王が微笑んだ。

《お前たちの父の姿を》

 血塗れになりながら、地面に倒れそうになりながら、それでも揺るぎない力強い瞳でやってくる大きな存在を。2人は瞬きもせずに眺める。


 やがて2人の目の前まで辿りついたフェイレイは、柔らかく微笑んだ。

「よく頑張ったな。もういい。……休んで、いいぞ」

 シンはガクガクする頭を懸命に横に振った。

「いや、だ。俺たちは……負け、ない。俺たちは、諦めない」

「……一緒に、いく……父様……」

「決めたんだ。父さんに、勝って。一緒に、行くって……。だから、絶対に、負け、ない……!」

 とっくに限界は超えているだろうに、それでもまだ倒れずに女王をここに留めていられる精神力には感服する。

 フェイレイは剣をごとりと地面に転がすと、シンとリィの頭にぽん、と手を乗せた。

「お前たちの気持ちは解った。けどな、父さんと母さんにも、曲げられない信念があるんだ。……解ってくれ」