麗しき星の花

「……駄目だ」

 しかし命中させたにも関わらず、リィは後退しながらクローリスとヴィオラを構えた。肩を貫通させるつもりで魔力を込めた。けれども鋼のような肉体には貫通どころか、掠り傷程度にしかダメージを与えられていない。

「多少は効いたけどな」

 そう言って、ローズマリーは凶悪な笑みを浮かべた。

「くっ!」

 向かってくるローズマリーに向かって、二挺の魔銃から氷弾を撃ち放つ。

 氷の精霊フラウは、炎の精霊サラマンダーと並んで攻撃力の高い精霊である。その力を以てしても、ローズマリーに致命傷を与えることは叶わず。

 拳が飛んでくる。

 氷弾が冷気の中で弾け、小さな瞬きとなって降り注ぐ中を。

 翡翠色の瞳にそれを映すリィは、一瞬の迷いを生じた。今全力で抵抗しなければ確実にやられる。けれども、高速で“計算”を繰り返す彼女の脳内では、こう判断が下された。


『これ以上は駄目だ』


 その判断が正しかったのか間違いだったのか。

 全身から力を抜いて短い草の上に足裏を滑らせ、向かってきた拳をくるりと回転しながら回避しようとしたリィは、完全に避け切れずに左肩に拳を食らった。

「──っ!」

 声にならない声が漏れ、地面に薙ぎ倒される。

「お返しだ」

 右肩から血を流したローズマリーは、ニイ、と唇の端を上げながら青白い闘気を纏わせた踵を振り上げる。

 痛みに呻くリィは、動けない。

 避けなくては、と右手に力を込めるも、自分の体ではなくなったかのように重く鈍い左側が、地面に縫い止められたまま動かない。

 朝霧を割って降ってくる青白い踵を見上げ、思わず呟く。

「シン……!」