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『私はもう、決めてるの』

 そう言い切った妹の揺るがない翡翠色の瞳を見て、シンも力強く頷いた。

「ああ、そうだよな。じゃあ、何としてでも説得しないと」

 その言葉に慌てたのはシャルロッテだ。

「ちょっとお待ちなさい。まさかリィまで他に決めた方がいるというのですか? そんなこと……だって兄上は」

「ルーはリィのこと友達だとしか思ってねぇよ」

「親愛の情があるだけ良いではありませんか。わたくしたちには選択の自由などありませんのよ?」

「だから味方を作るんだろ」

 シンがリィを見ると、彼女はこっくりと頷いた。

「ロッティ、これ、父様と母様に渡して……」

「お手紙ですか?」

「うん、決闘状」

 シャルロッテは驚きに目を見開いた。





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 ミルトゥワに帰ってきたシャルロッテからの報告に、フェイレイとリディルは「やはりこうなるか」と苦笑した。

 親を説得するのに決闘とは、あの子たちらしい選択だ。そのやり方を教えたのは自分たちなのだから、仕方ないとも言える。

 自分たちの未来を勝ち取ろうとする、彼らの想いは本物だ。それをしっかりと受け止めなくてはならないだろう。

「今行っても大丈夫かな」

「駄目ですわ。すぐに大事な会議がございますもの。それに、あの子たちにフェイレイくんの相手は早すぎます」

 そう言うのは皇后ローズマリー。

「それなら、私が」

 リディルの立候補も、ローズマリーは却下する。

「貴女はカインに付いていて。私が行きます」

 えっ、とフェイレイとリディルはローズマリーを見る。

「私があの子たちの成長を確認してきますわ」

 にこやかに微笑みながら、ボキボキと拳を鳴らす皇后陛下。ある意味フェイレイよりも恐ろしい体術の師匠が、地球に向かおうとしていた。