「ありがとう。……でも、覇龍闘は、何もしなくていいの」

「えっ、いいのかよっ」

 すっかり臨戦態勢となっていた覇龍闘は拍子抜けしてずっこける。

「うん。話を聞いてくれただけで十分。覇龍闘が怒ってくれたことが、私の力になるから」

「そ、そっか……」

 何だか少し残念そうな覇龍闘。話を聞くだけなんて、役に立てないではないか。何か出来ることはないのか。そんな感情が見える彼を見上げた後、リィは視線を彷徨わせた。

「あのね、ひとつだけ、お願いがあるの……」

「おう!」

 待ってました、と言わんばかりに覇龍闘は頷く。

「あのね、認められるまでは、色々あって、少し疲れちゃうと思うの」

「うん」

「そういうときは、えっと、その……」

 リィは少しだけ言い淀み、それから伺うように覇龍闘を見つめた。

「……甘えても、いい?」

 ほんの少し恥ずかしそうに、白い頬を染めながら訊ねられて、覇龍闘はゴトリ、とマテバを取り落とした。なんだか胸の奥を撃ち抜かれたような衝撃を受けたのだ。人はそれをトキメキという。

「お、おう」

 ぎこちなく頷く彼に、リィはほっとしたように微笑む。

「よかった……」

 その控えめな笑顔がまた可愛らしくて、覇龍闘の動悸が治まらない。どうした俺、なんで急にこんなに苦しい、と動揺する。人はこれを恋という。

 そんな彼の内心を知ってか知らずか、リィは嬉しさと感謝の気持ちを込めて背伸びをした。

 冷たい頬に寄せられる冷たい唇。けれども。

「覇龍闘、だいすき」

 その言葉で、触れたところから一気に熱が広がった。