麗しき星の花

「シン、行くよ……」

 気を失った兄の頬を軽く叩く。僅かに呻き声を上げたのを聞き、更に強く叩いた。

「今しかないよ。女王、喚ぶよ……」

 2人の足元に碧色の光が走る。それは星と円陣が幾重にも重なる多層構造の召喚陣を描き出した。

 奇襲が失敗した時点で、略式の召喚では倒せないとリィは踏んでいた。だからシンがフェイレイの気を引いているうちに正式な呪文を唱えておいた。後は喚ぶだけだ。

「シン」

「んう……」

 なんとか意識を覚醒させようとしているところに、とんでもない覇気が飛んできた。雷にでも打たれたかのような衝撃が走る。

 『勇者』と呼ばれた父の本気の出力は、縛り付けていた木の根を吹き飛ばし、更にはシンとリィまで吹き飛ばす勢いだ。

 ともすれば浴びただけで意識を失いそうになる、恐ろしいまでに神々しい覇気。それが逆にシンの意識を覚醒させた。

「やべぇ、行くぞ、リィ」

「うん」

 2人は手を繋いで立ち上がる。彼らの気に反応して、召喚陣がゆるやかに回りだした。

 碧色の光と平行するように繋いだ手を掲げ、最後の呪文を唱える。

「風の名を謳う、我が名は『麗しき星の花』! 名の契約に従い、血の盟約に応えよ、ロイエ・グィーネ!」

 足元の召喚陣から、渦巻く風が勢いよく噴き出してくる。その風に乗って、透明なドレスを身体に巻きつけた、長い髪を翻す風の精霊グィーネが現れた。