廊下に飛び出した野菊は、すぐにシャルロッテに追いついた。
「あ、えーと、えーっと、皇女様ー!」
そう声をかけると、シャルロッテは後ろを振り返ることなく、逃げるように走り出した。
「あっ! なんで逃げんの!」
野菊は足を速める。
しかしシャルロッテは長いローブと、その下に踝まであるドレスも着ているというのに、野菊を引き離して廊下を駆けていく。
「このぉ」
野菊のやる気スイッチが入った。
「待てえええええー!」
自慢のカモシカレッグが火を吹いた! ……というのは大袈裟だが、野菊は瑠璃一味唯一の普通の人寄りの人間だが、その運動神経は並外れている。体育祭での活躍も記憶に新しいところだ。
「なんて足……!」
チラリと後ろを振り返ったシャルロッテが、その足の速さに驚く。
「生意気ですわ!」
ドレスの裾を摘み上げ、シャルロッテは更に加速する。彼女は皇女という肩書きは持つものの、生粋の武道家だ。母譲りの天性の身体能力の持ち主なのだ。それが普通の人間などに追いつかれるわけにはいかない。
だん、と床を踏み抜く勢いで廊下を蹴り、階段の踊り場まで跳ね上がる。
「な……!」
野菊は目を見開き、そんな彼女をシャルロッテは勝ち誇ったように見下ろす。
「くっ……負けるかああああー!」
野菊は二段抜かしで階段を駆け上がっていく。それを見たシャルロッテは、更に階段を飛び上がり、上階へと逃げていく。


