「貴女のような方をシンのお相手として認めるわけにはいきませんわ。帰って父上や勇者殿たちにそう報告致します」

「おい、シャルロッテ……」

「シンもお早く目を覚ましなさいね。貴方、この方の見目良さに騙されていますのよ。こんな方などより、貴方に相応しい方は他にいくらでも……」

「シャルロッテ、話を聞け」

 こつん、とシンがシャルロッテの額を拳で小突いた。それほど強く叩いたわけではないが、シャルロッテは驚いたように目を丸くした後、痛みを堪えるように唇を噛み締めた。

「父さんたちに俺たちのことちゃんと見てこいって言われたのかもしれないけど、今のは言い過ぎだ。野菊を良く知らないでそんなこと言うのは失礼だぞ。謝れ」

「……わ、わたくしは、ただ、貴方に本当に相応しい人を、と。こんな何を為出かすのか分からない奔放な方などではなく、もっと落ち着いた方の方が安心出来るとっ」

「あー、うーん、確かに野菊は突拍子がなくて、何するか分かんなくて心配なヤツだよ。明らかにナンパされてんのにノコノコついていこうとするし、野郎の着替え覗いてたりするし、夏にプールで全裸で泳いでたりするし、かと思うと友達を身を挺して庇ってドラゴンに食われたりするしな」

 まさかそんなことを、とシャルロッテが野菊を見る。野菊はてへへ、と笑った。

「ほんっと、振り回されっぱなしだよ」

「だったら何故……!」

 シャルロッテははっとする。

 シンが優しい笑顔を浮かべたからだ。