解らない。

 今日一日シンと行動を共にしてみたが、シャルロッテにはどうしてシンが野菊を選んだのかが解らなかった。

 シンと野菊の間には、恋人同士特有の甘い雰囲気というものがない。野菊の方はべったりくっついたり、甘えた顔を見せているが、シンの方はどこかぶっきらぼうだ。あれだったら、リィへの態度の方がよほど優しい。

 野菊への態度と、“喧嘩友達”だという自分に対する扱いは、どう違うというのだろう。

 解らない。





「どうして貴女がシンの彼女なんですの」

 放課後、人の少なくなった教室で、シャルロッテは疑問を直接野菊にぶつけた。

「わたくしには解りません。何故貴女のような粗野で生意気で破廉恥で元気なだけが取り柄のような女性が、シンの彼女という立場にいられるのか」

 酷い言いようだ。

 傍で聞いていたシンとリィがぎょっとする。

「その破廉恥な行動で既成事実でも作ってしまわれたの? シンは真面目な方ですもの、責任を取ると言い出しても不思議ではありません。色仕掛けで落とすなんて淑女のすることではありませんわ」

 シンも野菊もなんとも微妙な顔をする。

 まったくそんな事実はないけれど、全部が否定出来ないところが痛い。スキンシップが激しいのは事実だ。ただ、それがシンにとって、野菊だから許せるものであるというだけで。

「色仕掛けしていたのはロッティもいっしょ……」

 リィがぼそりと呟くが、シャルロッテは「そんなことはありません!」と否定する。しかし自分でも自覚がある彼女は、顔が真っ赤だ。

「好きな人にくっつきたいのは、普通のことだと思うけどなぁ」

 口を尖らせながらそう言う野菊を、シャルロッテは顔を赤くしたまま睨みつける。