「はあ? 学校に行くだぁ?」

 目を見開くシンに対し、シャルロッテはにこやかに頷く。

「ええ。貴方たちの留学先である学園、是非とも見学させていただきたいわ。シンもリィも兄上には報告なさっているのに、わたくしには何も教えてくださらないのですもの」

「いや、お前、手紙よこせとか言ってないし」

「ですから! この目で見てみたいのですわ。わたくしとて、皇族の一員。いずれは兄上を助けて星を見守っていく立場です。様々な角度で見聞を広げていくためにも、貴方たちの学び舎を見てみたいのです」

 もっともらしいことを言ってはいるが、シャルロッテは単に野菊の顔を見たいだけである。野菊の顔を見て、どんな人物か見極めたいのである。

「ルーとか惑星王とか、すぐ帰ってこいって言わなかったのか?」

「転移魔法陣を連続で発動させるのは、さすがの勇者殿とリディアーナ様でも無理なのでしょう?」

「……そうだった」

「数日お世話になる予定ですから、よろしくお願いいたしますね。さあ、そうと分かればエスコートを頼みます」

 シャルロッテは微笑みながら右手を差し出す。

 シンはその色白な手とシャルロッテの顔を交互に眺め、わしわしと頭の後ろを掻き、諦めたように溜息をついた。そしてシャルロッテの手を取り、膝をついて頭を垂れる。

「仰せのままに、皇女殿下」