シンの彼女、薙沢野菊は実に愛らしい天真爛漫な少女ではあるが、シャルロッテを満足させる要素が限りなくゼロに等しい。

 シャルロッテと野菊を引き合わせることは危険だ。もし野菊に怪我でもさせることになれば、シンだって黙っていない。だから、なんとか誤魔化さなければ。

 リィは一瞬だけそう判断した。

 だが。

「……これから学校だから、ロッティも来る? 絶対に騒ぎを起こさず、大人しくしているなら、野菊ちゃんに会わせてあげてもいいよ……」

「当然、騒ぎなど起こしませんわ。わたくしは惑星王が第三子、シャルロッテ=サラス=ユグドラシェル。淑女に相応しい行動を取ってみせますから、安心なさい」

「……わかった」

 リィは頷いた。



 野菊はシャルロッテの望むような要素は持ち合わせていない。けれどもきっと、誰よりもシャルロッテを納得させられる。それだけの“武器”を彼女は持っている。

 リィはそのことを、誰よりも知っていた。