「あの……シンの好きな人は、私じゃないよ……」

「貴女ではないですって!? 貴女ではないの!?」

「う、うん、違う……私じゃないよ……」

「ユグドラシェルに誓って!?」

「うん、ユグドラシェルに誓って」

「そんな……貴女では、ない……?」

 シャルロッテはリィから手を離すと、ペタリと絨毯の上に座り込んでしまった。

 だから何故、相手が自分ではないからとそんなにショックを受けるのか。

 リィが微妙な気分になっていると、シャルロッテがすっと立ち上がった。その顔は落ち着きを取り戻し、穏やかな笑みが戻っている。

 良かった、納得してもらえたのかとホッとしていると、シャルロッテはにこやかに言った。

「分かりましたわ。では、シンの彼女の元へ案内してくださいな」

「えっ?」

「シンに相応しい淑女であるのか、わたくしが直々に見分して差し上げますわ。わたくしが是とするならば、父上たちを納得させられますし。さぞ素晴らしい女性なのでしょうね。このわたくしよりも美しく、このわたくしよりも強く、このわたくしよりも、男性を満足させられる! そんな、女神のような女性なのでしょうね!」

 むん、と胸を張るシャルロッテの豊かな実が、たゆんたゆんと揺れた。

 クラスメイトで親友でもある早川鬼龍に匹敵する、なんともけしからん揺れ具合だった。

 リィはあさっての方向を見る。


 彼女よりも淑女か──否。

 彼女よりも強いか──否。

 彼女よりもけしからんか──否。


 まったくもって、否、だ。