しばらく見学していると、シンとリィの動きは基礎的な動きから実戦形式へと移ってきた。

「ふうん、凄いな」

 感心しながら2人の動きを見ていた聖は、あることに気づく。

 シンは攻撃を仕掛けながら、リィのカウンターを見極めて避けている。そこまでは美しいと感じるほど流麗な動きなのだが、更に踏み込もうとする、その動きだけ精彩さに欠けていた。

 踏み込みを躊躇っているのかと注意してよく観察してみれば、そうでないことが分かった。

 何かがしたい。

 そのための動きを模索中なのだということが、分かった。

 そして、その『何かがしたい』シンに対して、リィも『何かをさせようと』動いていることにも気づいた。

 何がしたいのか。

 しばらく眺めていた聖は、拓斗に声をかけてみる。すると彼は頷いた。

「うん、多分、回避と攻撃を同時に行うような動きを模索していると思うんだ。ただ、シンくんに確認してみても、本人も無意識に動いているらしくて、うまく回答が得られないんだけれど」

「回避と攻撃ね。その動きは十分出来ているようだけれど、今ある形の物から更に発展させた動き、もしくはゼロから作り直したい、のか……。そしてその形を、シンくんよりはリィちゃんの方が身になっている、ような感じだな」

「よく分かるね」

 拓斗は目を丸くする。

「なんとなくね」

 聖は軽く頷きながら、2人の動きを丁寧に追っていった。

 そしてやはり、シンが無意識のうちにリィの動きの真似をしていることに気づいて、その口元に笑みを浮かべた。


 ──面白そうだ、と。