「琴音、ごめんね、怖い思いをさせて……」

「そんな! 私の方こそ……私が不用意に捕まってしまったから、リィファさんはあんな戦い方をすることになったんですよね……私の方こそ、怖い思いをさせてしまって、申し訳ありませんでした……」

 ぺこりと頭を下げる琴音。

「……私が判断を誤ったから、琴音を更に窮地に立たせるところだった……もっとうまく、出来たかもしれないのに……」

 リィは視線を下げ、琴音と同じように頭を下げる。

「弱くて、ごめん……次は、間違えないようにする……」

「そんな、リィファさんはお強いですよ!」

「そんなことない……」

「強いのです! 自分の弱さを受け入れられる方が、強くないはずはないのです」

「……そんなこと……」

「あー、もう、いいだろ」

 シンがそう言って、頭を下げ合うリィと琴音の頭を同時にぐしゃぐしゃと撫で回した。

「お前らは強いよ。俺は、知ってる。それでいいだろ」

 ぐしゃぐしゃと更に乱暴に撫でられて、最後にはこつん、と拳で叩かれた。

 そうして顔を上げた二人は、髪が乱れて散々になったお互いの顔を見て、ぷっと噴き出した。

「うん」

「はい」

 くすくすと笑いながら、頷きあう。それを見て満足したシンも笑い、そうして玲音やシルヴィの待つ方へと歩いていった。

 すっかり魂を抜かれたようになっている不良どもを置いて。




 ちなみに、何故シンがあのタイミングで助けに入れたのかというと。

「はっ、リィが危ない! そんな気がする!」

 玲音とシルヴィと一緒にカフェで休憩中、いきなりそう叫んで猛ダッシュで走っていったからだった。

 玲音からは「流石リィシンさん(シスコン兄貴)ですね」

 という、副音声付きのコメントが出たそうな。