「私たち、今は皇籍に入っていないけれど、いざというときは皇家に呼ばれるよ……?」

「ねぇよ。ルーの兄弟五人もいるんだぞ」

「今の時世、どうなるか分からない……。神殿の方でなにか、動いているって、母様も言っていたし……。正統な皇位継承権を持つ、その立場を、忘れてはいけない……」

「それ言ったら、お前だって……」

 シンの指摘に、リィは一瞬だけ黙った。

「……私のことは、今はいい。ルーたちに何かあるか、神殿側から何か言われたら」

「皇子たちになにかあるなんて考えるなよ」

「可能性を、忘れてはだめってこと……そして、それに野菊ちゃんを巻き込む可能性も、ゼロではないっていうこと……忘れないで」

「……分かったよ」

 シンは赤い髪をガシガシ掻いて、大きく息をついた。

「俺が守ればいいってことだろ。何があっても、な」

 力強く輝く深海色の瞳。

 それを見つめていた翡翠色の瞳が、ふっと優しく細められた。

「……まあ、可能性はゼロに限りなく近い。そもそも、あなたが皇帝(惑星王)になるなんて、考えただけでも恐ろしい……星が滅びる……」

「な、お前なっ!」

「好きなことをして生きる。それが、シンには合ってる……」

 そう言って、リィは一冊のノートをシンに手渡す。

「なにこれ?」

 受け取ったノートをパラリと捲ってみる。中は魔法陣や文字でぎっしりだった。