麗しき星の花

「……はい」

 その日の夕方、自室のリビングにいたシンに、リィが一冊の図鑑を差し出した。開かれたページには、あの淡い紫が。

「『ノコンギク』。夏から晩秋にかけて咲くんだって。これからの時期、野山にはたくさん、咲いているみたい」

「ノコンギク?」

 あの淡い紫色の花はそういう名前なのかと、シンはリィの差し出した図鑑を手に取り、その写真に見入った。

「……『野菊』には、たくさん、種類があって」

 説明を続けるリィに、シンは顔を上げる。

「その花が、代表的な『野菊』、なんだって」

「……野菊?」

 シンの問いに、リィは頷く。

「野菊という花はなくて、野に咲いている菊の総称を『野菊』というの。その花は、野菊の代表みたいなもの。……だから、気になったの?」

「え?」

 シンは深海色の目をぱちりと見開いた後、ぶんぶんと首を横に振った。

「いや、そんなんじゃねぇよ。そもそも、花の名前なんて知らねぇし」

 頬を掻きながらそっぽを向いたシンは、でも、と言葉を続けた。

「……気になったのは、気になったけど」

「……そう?」

「ああ。教えてくれて、ありがと」

「うん」

 ふわりと微笑んだリィに、シンはちらりと視線を向けながら、少し言いづらそうにモゴモゴ続ける。

「そんで、あの……。野菊はさ、こういう花、好きかな?」

「どうかな……?」

「ミルトゥワに、知ってる花があった方が、喜ぶかな?」

「……かもね?」

「そうか」

 なんだか頬を赤くしているシンをジッと見つめていたリィは、こてん、と首を傾げた。