早朝五時ともなれば明るかった夏の庭も、だんだんとその色を失ってきた。鳴く虫の音も涼やかなものへと変化し、秋の気配を漂わせ始める。
天神学園最強決定戦『タイマントーナメント』が近いことで、いつも以上に気合の入っている双子は、まずは橘邸の屋敷の周りを走り、身体を温める。
その前方には拓斗の背中があり、追いつこうと全力で走るのだけれど、ちっともその差は縮まらない。悔しがるシンが、「昔フェイレイさんに追いつけなかったのは僕の方だったよ」、と拓斗に教えてもらったのは後の話だ。
百メートル走と間違えているのではないか、というスピードで駆けていく師匠、拓斗を追い抜かんと、猛烈な勢いで走っていたたシンは、視界の端に映った色に思わず振り向いた。
スピードが落ちた横をリィが追い越していったが、後ろを振り向くシンに、彼女も足を止めた。
「……どうしたの?」
ふわふわしたハニーブラウンの髪に風の精霊シルフを纏わりつかせながら、こてん、と首を傾げるリィ。
「いや……なんでもないんだ」
こちらもツンツンした赤い髪に風の精霊を纏わりつかせ、シンは軽く首を振った。
くすくすくすと、シルフの笑い声が涼やかな朝の空気に響く。
次の日も、同じ場所でシンは速度を落とした。
広大な庭のほとんどを占める森の一角、その片隅に咲く、小さな小さな花が敷き詰められた、淡い紫色の絨毯。
その色を眺めるシンを、リィはジッと眺める。
天神学園最強決定戦『タイマントーナメント』が近いことで、いつも以上に気合の入っている双子は、まずは橘邸の屋敷の周りを走り、身体を温める。
その前方には拓斗の背中があり、追いつこうと全力で走るのだけれど、ちっともその差は縮まらない。悔しがるシンが、「昔フェイレイさんに追いつけなかったのは僕の方だったよ」、と拓斗に教えてもらったのは後の話だ。
百メートル走と間違えているのではないか、というスピードで駆けていく師匠、拓斗を追い抜かんと、猛烈な勢いで走っていたたシンは、視界の端に映った色に思わず振り向いた。
スピードが落ちた横をリィが追い越していったが、後ろを振り向くシンに、彼女も足を止めた。
「……どうしたの?」
ふわふわしたハニーブラウンの髪に風の精霊シルフを纏わりつかせながら、こてん、と首を傾げるリィ。
「いや……なんでもないんだ」
こちらもツンツンした赤い髪に風の精霊を纏わりつかせ、シンは軽く首を振った。
くすくすくすと、シルフの笑い声が涼やかな朝の空気に響く。
次の日も、同じ場所でシンは速度を落とした。
広大な庭のほとんどを占める森の一角、その片隅に咲く、小さな小さな花が敷き詰められた、淡い紫色の絨毯。
その色を眺めるシンを、リィはジッと眺める。