残されたフェイレイとヴァンガードは、しばらくむっつりと黙っていた。やがて、ぼそりとヴァンガードが訊ねる

「……フェイレイさん、交際を認めるんですか」

「しょうがないだろ」

「決闘すべきじゃないですか。なんなら師匠の僕がやりますか。同じ拳銃使いだし」

 ヴァンガード、鋭い水色の目が更に鋭くなる。しかも『私』が『僕』になっている。思いっきり素だ。

「馬鹿。決闘の権利は父親である俺のものだ。でもリディルに『そんな恥ずかしい真似はやめて』って言われてるからな……。それに、リィからの手紙だと、心の傷を心配したり、色々気遣ってくれる優しいヤツで、ちょっと子どもっぽいところもあるけど、明るくて元気で、頼りがいのある一途な……シンみたいなヤツで」

 フェイレイは目を輝かせて拳を握り締めた。

「シンみたいなヤツってことは、俺みたいなヤツってことだろ……!」

 だから認めないわけにはいかないんだ、と、キラキラした深海色の目は語っていた。

「余計に認めたくありませんね」

「なんでだよ!」

「貴方みたいな馬鹿なら、尚更、リィに相応しいとは思いません」

「くっ、腹立つ! でも俺が馬鹿なのは事実だから言い返せない!」

「そういうところが馬鹿なんですよっ!」

 『馬鹿』正直で真っ直ぐなフェイレイに、ヴァンガードは苛々と怒鳴った。

 けれども写真を手に戻ってきたリディルを見るとすぐに冷静を取り戻し、すっかり元通りの微笑みを浮かべて写真の中の子どもたちに視線を落とした。

「……立場を、越えられそうですか」

 その言葉は、やけに重みを帯びていた。フェイレイとリディルは視線を合わせて、頷き合う。

「あの子たちが選んだ道を、全力で応援するさ」

 フェイレイの穏やかながら力強い言葉に、リディルも小さく微笑みながら頷く。

「……そうですか」

 ヴァンガードはフッと笑みを漏らし、写真をテーブルの上へと置いた。

「ならば、その時は僕が見極めてあげましょう」

「だからそれは父親の俺の役割だって」

 実の父親と自称父親代わりの会話にリディルは微笑みながら、お茶のおかわりをカップに注いでやった。