厳しい旅の途中だったフェイレイたちは、魔族側から新たな交渉を持ちかけられたため、一旦皇都へ戻ってきていた。

 その報告が終わり、宮殿の客室でリディルと休んでいると、子どもたちから手紙が送られてきた。ちなみにクードはいない。彼は宮殿には入りたがらないし、宮殿の兵士たちも魔族にはいい顔をしないからだ。そのあたり、まだまだ人と魔族の間に隔たりを感じる。時間をかけて少しずつ解決していかなければならない問題だ。


 白い封筒から取り出した手紙には、体育祭での活躍が認められていた。

「お、シルヴィは50メートルで一位、シンは100メートル走で霸龍闘や孔雀と同点一位、リィは玉入れで勝ったかー」

「三人とも、頑張ったね……」

「ああ。何かご褒美やらないとな。……あは、スペシャルバカは今年も吹っ飛んだんだ」

「あの日の光景を見ているみたい……懐かしいね……」

 子どもたちの手紙に目を細めていると、部屋のドアをノックされた。顔を覗かせた騎士が一礼する。

「ヴァンガード=ユウリ=エインズワース様がお見えです」

「ヴァン? ああ、通してくれ」

 騎士はすぐに下がり、代わって長身で水色の髪の美青年が入ってくる。

「よおヴァン、休憩か?」

「ええ」

 フェイレイの問いかけにヴァンガードは笑みを浮かべて頷いた。すぐにリディルが腰を浮かす。

「お茶、淹れるね……」

「リディアーナ様、長旅でお疲れなのですから、お気遣いは無用ですよ」

 その言葉に、リディルは「そう?」と小首を傾げた後、しかしお茶の準備のため、給湯室へと歩き出す。その途中、肩越しに振り返った。