「玲音は何て書くんだ?」

「僕は宿題は出てないけど、一応、『長生きしてね』ってお手紙を書くよ。あと、肩たたき券。お爺様はそういうの喜んでくれるんだ。お婆様には琴音ちゃんと一緒にハンドクリームを選んで贈るつもりだよ。ヴァイオリニストは手を大事にしないといけないからね」

「ぷれぜんとだか……」

 シルヴィはふうん、と頷いた。

「おれも兄ちゃんと姉ちゃんに聞いでみるべ」

「うん、それがいいね」

 愛らしく微笑む玲音と、八重歯を見せて元気いっぱいの笑顔を浮かべるシルヴィ。

 お菓子を運んできた東条は、並んでソファに座り、笑い合う2人に顔を綻ばせる。まるで兄妹のようだと思ったのだが、シルヴィの方が年も学年も上だということに気づいた。

 この場合、姉弟、なのか──。

 しかし見た目には少年と幼女。果たしてどの言い方が正しいのか。

 そんなどうでもいいようなことを真面目に悩んでいたために、お茶の温度をいつもより低く淹れてしまった。それで玲音にチクリと嫌味を言われて、ゾクゾクッと震えながら喜んでいたりした。……まあ、これもどうでもいいことである。





 外が暗くなり始めた頃、シンとリィは学校から帰ってきた。

「じいちゃんとばあちゃんかー」

 自分たちの部屋のリビングで、シンがバランスボールの上に座りながら顎に手をやった。

「こっちには、そういう素敵な行事もあるんだね……社会に貢献してきた先輩方に、感謝の気持ちを贈るの……」

 リィはバランスボールに立っている。ボールは一ミリも動かないし、姿勢も崩れる気配がない。素晴らしい平衡感覚だ。