「……今日の晩御飯は、何を作ってあげるんですか……?」

「そうですねぇ。先日栗をいただいたので、栗ご飯にしようと思うんですよ。あとは鮭の塩焼きと、秋刀魚のすみれ汁なんかがいいですかねぇ。朝つけておいた茄子のお新香もありましたっけ」

 まだ袖で口元を隠しながら、雪菜は答える。

 リィはしばらく間を置いて、こてん、と首を傾げた。

「……すみれ、汁?」

「はい、すみれ汁。ああ、リィちゃんたちにはあまり馴染みがないでしょうね。秋刀魚やイワシなどのお魚をおろしてすり身にして、酒やみりんや醤油、生姜やネギなんかをちょっと入れてお団子にするんです。それを味噌や出汁で作ったスープの中に入れて煮れば完成です。おいしいですよー」

 あれ、それ、『つみれ汁』って言うんじゃなかったっけ?

 リィは更にこてん、と首を傾げた。

「もう少し寒くなったら、学食メニューにもなっている『ほら吹き大根』もおいしいですよ。私の母の得意料理だったんですけれどね、お味噌がおいしいんです。お二人とも、是非食堂で食べてみてくださいね」

 あれ、それ、もしかして『風呂吹き大根』のことじゃない?

 リィは更に更にこてん、と首を傾げた。

 シンもハムスターのように頬を膨らませながら首を傾げた。

 他にも奇怪なメニューが飛び出す。

 鮭のナンチャン漬け、いわしのブタ焼き丼、あさりの逆上がり、剣山汁、アゲアゲ豆腐、茶碗虫……字面だけでは一体どんな料理なのか想像し辛いものがどんどん出てくる。

「みんな防人さんの好物なんですよ。一番好きなのは『カボチャプリン』ですけれどね」

 ……死神の好物、謎だ。

 シンとリィはしきりに首を捻る。