風呂から上がり、赤い髪をタオルで拭きながら簡易キッチンにやってきたシンは、冷蔵庫を開けて豆乳パックを取り出した。それをコップに注いで一気飲みしていると、バスルームの方から楽しげな歌が聞こえてきた。シルヴィの声だ。

 シンと代わり、今はシルヴィとリィが風呂に入っている。よほど大声で歌っているらしく、歌詞まできっちり聞こえてきた。おばけなんていないよ~、という童謡だ。学校で習ってきたのだろうか。

 元気な歌声に自然と顔を綻ばせながら、空になったコップにまた豆乳を注ぐ。するとパックが空になってしまった。

 リィの分は残っていただろうか。豆乳はバストアップのための必需品なので、全部飲んじゃったとか言ったら怒られるかもしれない。しかしシンにとっても豆乳は身長を伸ばしたり筋肉をつけるための必需品である。まずいとは思いつつ注いだ豆乳はゴクゴク飲み、確認のために冷蔵庫を開けた。

 そこで歌の代わりに妹たちの甲高い悲鳴が響き渡った。

 シンは冷蔵庫を乱暴に閉め、豆乳入りのコップをシンクの中に放り投げてバスルームへ走った。

「どうしたっ!」

 引戸を勢い良く開け放つのと同時に、妹たちが半泣きで飛びついてきた。

「シン……シン……!」

「に゛ゃあ゛あ゛あ゛あ゛、にいぢゃあああ、にいぢゃあああああー!」

 リィが首に、シルヴィが腰にしがみついてくる。風呂に入っていたのだから当然なのだが、2人とも風呂に入るときの格好であり、びしょ濡れである。シルヴィに至ってはリィに頭を洗ってもらっていたのか、碧色の頭は泡だらけだ。