お前たちの名前を合わせると、『麗しき星の花』っていう意味になるんだ。


 そう聞かされたのは確か、次の『渡航』でミルトゥワへたどり着けるだろうという惑星でだった。

 手を伸ばせば届きそうなくらい近くに月が見える、夜の長い惑星。

 ゴツゴツとしたクレーターがはっきり見える月に、シンは「カッコイイ」と大はしゃぎだったけれど、リィにはあまり綺麗には見えなかった。今にも押しつぶされそうな圧迫感に、母の影に隠れてばかりいた。

 あまり母から離れたがらないリィを落ち着かせるためか、父と母は聞かせてくれたのだ。

 『リィシン』と『リィファ』の、名前の由来を。



 シンとリィの両親であるフェイレイとリディアーナは、長い間旅をしていた。

 その旅の始まりは、人と魔族、そして精霊を巻き込んだ世界大戦が終戦した翌年。世界を救った勇者である父と皇女の母は、ミルトゥワから忽然と姿を消した。

 2人が辿りついたのは、見たことも聞いたこともない異世界。

 そこは人も魔も幽霊も、妖精も宇宙人も妖怪も、更には神や死神まで。ミルトゥワ以上に色んな種族が集まる世界だった。

 その世界を訪れたのは本人たちの意図するものではなかったけれど、もしかしたら自分たちの望んだ形であったのかもしれない、と。

 そこで大切なものを見つけたんだ、と両親は微笑んでいた。

 シンとリィの名前は、そのときにお世話になった人の国の言葉なのだという。

 父の母──双子からすれば祖母だが、その世界には祖母にそっくりな人がいた。名前を『にゃんにゃん先生』というらしい。

 両親がとても大切な人だと教えてくれたその先生の名前は、猫みたいでかわいいな、と思ったのですぐに覚えた。

 その先生の国の字にすると『麗星』と『麗花』。

 麗しき星の花という、リィシンと、リィファの名前だ。