夏休みも半ばに差し掛かったある日。双子は自室の寝室にて、主治医の先生から診察を受けていた。先にシンが診てもらったので、今はリィの番だ。

「……うん、大丈夫なようだね。あれから風邪を引いたり、具合が悪くなったりはしなかったかな?」

 甘く低い声でそうリィに訊ねるのは、5月にリィとシンが続けて熱を出した後から主治医となってくれた櫻井聖(さくらいひじり)。拓斗と同じ年で、御三家筆頭柊家当主、柊真吏の親友と言われている男性だ。

「はい、問題ありません……」

 リィは恥じらいながら開いたブラウスの前を合わせた。

 チラリと向けた視線の先では、ダークブラウンの長めの前髪をした聖が、黒縁眼鏡の奥の切れ長の瞳を柔らかくして微笑んでいる。

「それなら良かった。この間みたいに調子が悪くなることがあったらすぐに言うんだよ。酷くなってからでは手遅れになることもあるからね。我慢しないで、ちゃんとお兄ちゃんや周りの人に言うこと。いいかい?」

「はい……」

 リィはこくりと頷いて、微かに震える手でブラウスのボタンを留めていく。彼女にしては珍しく緊張していた。

 それに気づいたのかそうでないのか、聖はリィから視線を外して、紙のカルテにサラサラとペンを走らせる。そんな彼の横顔をリィはジッと見つめた。