「私からはこれを」

 琴音が3人にそれぞれ渡した包みの中は浴衣だった。

 シンには紺のかすれ縞に水浅葱の角帯。リィには薄桃に牡丹柄、唐紅の帯。シルヴィには淡黄に赤い金魚が泳ぐ、朱色の帯の浴衣だ。

「もうすぐお祭りや花火大会がありますからね。是非それを着て楽しい時間を過ごしていただきたいのです」

 にっこり笑う琴音に、シン、リィ、シルヴィも笑顔で礼を言う。

 試着してみたのだが、浴衣など着たことがないのでうまくいかず、メイドさんたちに着付けてもらった。下駄がカラコロ鳴るのが楽しいシルヴィは、そのまま広間を走り回って兄ちゃんに怒られ、「ごめんなんしょ……」としゅーんと項垂れた。

 しかし玲音からのプレゼントに、すぐに復活。

「僕からはこれ。気に入ってくれると嬉しいなぁ」

 玲音からは、両親からの手紙を入れられる大きめの文箱だった。それぞれ星、花、果物が掘り込まれている。

「うまそうなメロンにバナナにリンゴだ! 玲音、ありがとない!」

 シルヴィは文箱を頭上に掲げ、喜びを表現するかのようにまた走る。

「こら、シルヴィ!」

 シンは声を上げるが、周りがみんな微笑ましそうな目で見ているので強くは言わない。

「……『誕生日』、だからね」

 リィも微笑んでいる。

「仕方ないなぁ。今日だけだぞー」

 シンもそう言って、笑顔を見せた。