鬱蒼と木々が茂る深い森の中。

 フェイレイは愛剣『ユースティティア』を二刀に分解すると、燃えるような赤い髪を跳ねさせながら木々の枝を次々に飛び移っていった。

 そのすぐ後方の木々が、一瞬で薙ぎ払われる。

 チラリと視線を後ろへやると、青白い肌をした一つ目の巨人が、フェイレイの二倍はありそうな棍棒を振り切ったところだった。

 煤けた茶色の貫頭衣をまとった巨人は、地の底から響くような咆哮を上げながら更に棍棒を振り下ろす。それは木々の枝を折り、地面を砕く。それを避け、フェイレイは枝から枝へと渡っていった。

「もうちょっと」

 そう言って、力強く枝を踏み抜く。その直後に棍棒がその木を吹き飛ばした。

「あと一歩」

 次の枝を踏みしめる、そこに棍棒が襲い掛かる。

 だがフェイレイは唇の端を上げた。

 巨人は棍棒を振り落とすこと無く、音もなく忍び寄ってきた木の枝に足を絡め取られ、地に沈んだ。気配も読み取れない遠距離から、リディルが森の木々を操ったのだ。

「よっしゃ」

 それを見て踵を返す。

 同時に、フェイレイとは逆方向から、黒い翼を広げた黒髪の青年が飛び出してくる。

「行くぞクード、とどめだ!」

 黒い青年は視線だけでそれに頷き、フェイレイとともに巨人に斬りかかった。




「はあー、終わった終わった」

 ユースティティアを腰の鞘に戻し、フェイレイが一息ついた。

 目の前には山のように大きな巨人が倒れている。更に離れたところに別の巨人、更に更に離れたところにはまた巨人。

 この鬱蒼と茂る森の中は、気絶した巨人たちで埋め尽くされていた。一体何人と戦ったのか、途中から数えるのを放棄したくらいに大勢の軍勢に攻められた。