「拓斗さんが身を固めたとなると、お次は花音さんかしら……。琴音さんの前には嫁いで欲しいものですねぇ」

 まるで娘や孫を見るような優しい目で、生けた花を手でそっと包み込む。


 藤家は柊家とは異なり、政界に多くの議員を輩出している家である。更紗自身、大臣職をいくつか経験した。今はもう引退し、隠居の身であるが。

 国を支えるという点では、ある意味藤家が最も先祖の血を引き継いでいるのかもしれない。

 そして、御三家の中で最も異彩を放っているのが橘家となる。

 橘家は明治時代から不動産業をしていたのだが、昭和に入る頃からは音楽に目覚め、現在は不動産業は副業となり、芸の道へと突き進んでいる。

 
「では、拓斗さんに早くお嫁さんを連れて遊びにいらっしゃいと伝えておいてね。喜屋武家のお嬢さんは面白い手品をなさるとか。お会いするのが楽しみです」

 そして、その『芸』を愛でるのが好きな藤家当主である。

 ……魔術は手品ではないのだが。



 このような感じで、準備は超スピードで進められ、橘・喜屋武両家の結婚式は盛大なものとなったそうだ。