「シンだったら、なんて言う?」

「プロポーズ?」

「うん」

「うーん……『好きです』?」

「……それはただの告白?」

「あー、そうか。じゃあ、『結婚してください』?」

「ふうん……ストレートだね」

「だってあんまりゴチャゴチャ言うの、めんどくさいし。気持ちが伝われば良くないか?」

「……そうだね。私も、真っ直ぐ伝えてくれる方が、嬉しい、かな……」

「ふーん。……霸龍闘とかに言われたら?」

「え?」

 ほんの少し間を置いて、リィの頬がみるみる赤く染まった。

「……そ、そん、……し、シンは? 野菊ちゃんに?」

「はあ? んなわけねぇだろ、野菊は仲間だぞ?」

「でも、彼女なんでしょ……?」

「いつの間にそうなってんだよ。あれは不良どもが勝手に勘違いしただけだろ」

 まだ梅雨の時期に、野菊が不良たちに絡まれているのを助けたことがあった。その時に何故かシンが野菊の彼氏であると認識されてしまっていたが、どうやら妹にもそんな目で見られているらしい。

「……でも、野菊ちゃんにべったりされても、嫌じゃないんでしょ?」

「あー? ……うーん……うん、別に、嫌じゃないけど……ちょっと戸惑いはあるけど、別に、嫌じゃない、な」

 シンは少し考える。

 最近スキンシップの激しい同級生の女の子。べったりくっつかれるのは妹で慣れてはいるけれど、その安心感とはまた違う、なんだかドキドキする女の子。

 これが他の女の子なら、と想像してみると、違和感がある。

 彼女だから“嫌じゃない”のだ。

「あいつはなー。何するかわかんないし、なんか、危なっかしくて放っておけないから……くっついててもらった方が、俺も安心だな……」

「ふうん……」

「なんでニヤつくんだよ」

「ううん……」

「なんで笑うんだよっ」

 リィは微笑みながら首を振る。

 シンはちょっと赤くなりながら、頬を膨らませる。

 そんな2人を、いつの間にか橘家の面々が微笑ましそうな目で見ていた。