椅子にかけてシンが戻ってくるのを待っていたルドルフは、待てども待てどもシンが戻ってこないので、寝室に様子を見に行った。

 すると天蓋付きの広いベッドの端で、リィに押しつぶされる形でうつ伏せになっているシンを発見した。

「ここでは君の矜持は必要ないということだね」

『護るべきものがあるときは絶対に倒れない』。それがシンの矜持。

 しかしここはシンにとって、そんな矜持は必要ない場所のようだ。そう思って貰えるのは、ルドルフには嬉しいことだった。

 苦笑しながらリィを抱き起こし、ベッドの中央に寝かせてやる。その隣にシンも並べて寝かせてやった。

 目の色も髪の色も、表情さえ違う2人は、並んでいても似ているとは思わないのだが、不思議と寝顔だけは似ていた。

 その穏やかな寝顔を、ルドルフはベッドの端に腰掛けて眺める。

「……本当は、早く異世界に旅立って欲しいんだって言ったら……君たちは怒るかなぁ……」

 勇者に敗北し、納得した上で異世界へ楽しく留学して欲しい。

 きっと彼らに近しい者たちはみんな、そう願っていた。