なかなか決着がつかずにいた第二ラウンドは、シンが床に落ちた汗で足を滑らせて体勢を崩すという迂闊さで、リィにダイビングされて終わった。

「うああああー、やっちまったぁ」

「足元を疎かにしてはいけない……」

「くっそ、こうなったら『鬼ごっこ・改』だ!」

「いいよ……負けないから……」

 2人とも頬を伝う汗を拭いながらも、まだまだやる気満々だ。

「兄ちゃんたちー、まだ終わんねのー?」

「もうちょっと待ってなー」

 そろそろ待ちくたびれてきたシルヴィにそう言い、鬼ごっこ・改が始まる。

 鬼ごっこ・改とは、同じく円の中で鬼ごっこをするのだが、触ろうと攻撃を仕掛けてかわされたら、そこで攻守交替となるルールに変更になる。

「おりゃっ!」

 先制したシンの水平に振られた手がかわされた。その瞬間にリィが鬼となる。

 すでにリィの間合いに入り込んでいるシンは、水平に腕を振ったため、懐ががら空きだ。リィはそこに飛び込んで、両手を突き出した。

 だがシンは間一髪で身を翻した。一度バック転してから、高く宙返り。そこで鬼役はシンへ移行。

 リィが離れる前に、宙返りした状態から手を出す。

 それをリィはお見通しと言わんばかりに、身を低くして避け、シンの着地点に滑り込む。この時点で鬼はリィだ。

「うおっ!」

 着地点に鬼がいるので、シンは縦回転していた体に横回転を加えて、着地点をズラした。鬼役になったシンは背面跳びの踏み込む状態のような格好で着地し、すぐに体勢を整えて回転する──。

 そんなことが、延々と。

 延々と続いた。