星を巡る旅をしている合間、何の娯楽もなくて退屈していた子どもたちに、フェイレイとリディルが教えてくれた遊びのひとつ。

 限られた空間内で逃げて、追いかけて。触れば攻守交替になるという、簡単、単純なルールだ。場所も取らないので、天気の悪い日や狭い場所でもすぐに出来る。

 これがただの遊びではなく、両親が以前所属していたギルドでの戦闘訓練と似たようなものだと知ったのは後々になってから。

 過酷な旅を続けていく中、どうしても子どもたちに戦闘技術を教えなければならなかったフェイレイたちが、飽きずに基本を覚えられるようにと考えてくれた訓練方法だった。

 足を伸ばしてもギリギリ届かない範囲内での鬼ごっこ。

 逃げ方、追い方は自由。

「んじゃ、行くぞ!」

 円の端から、まずはシンが仕掛ける。

 一歩踏み出して腕を伸ばすと、リィはくるりと回りながら横へ逃げた。その横へ回り込んで回し蹴りを繰り出すと、リィは体の柔軟性を生かし、大きく仰け反った。そのままバック転でラインギリギリを移動し、シンに対して正面を向いて構えた。

──相手に対し、常に正面を向くこと。視界から逃さないこと。

 フェイレイが実践で示し、リディルが口頭で教えてくれた、基本的なことだ。体が無意識のうちに、その教えの通りに動く。

 そこにシンの追撃が続く。

「ふっ!」

 高速歩法からの、速い回し蹴り。

 これをリィは頭を低くしてかわした。その足元に、追撃の回し蹴りが放たれる。