梅雨に入り、雨ばかりの毎日。

 幾度か雨の庭で修行をしたシンとリィだが、リィが風邪を引きそうな気配がしたので、シンが反対。しばらくは筋力トレーニングに重点を置くことにしたのだが、やはりなにか物足りない。

「うーん」

 何かいい案はないかと考えていると、同じことを考えていたらしいリィがぽつりと言った。

「……あれ、やろうか?」

「あれ?」

 シンは首を傾げて少し考えて。

 ニヤリと、笑った。

「いいな、あれやろうぜ」




 橘邸の一階、客室が並ぶ棟に、広々とした大広間がある。

 新年会や忘年会、様々なパーティが行われる際に使われる広間は、ピカピカに磨き上げられた大理石の床で出来ている。

 そこに、申し訳ないのだが赤いテープで円を描いてもらい、直径2メートルほどの『場』を作った。

「鬼ごっこ、おれもやりっちなー(やりたいなー)」

 シルヴィがぷう、と頬を膨らませている。

「ごめんなシルヴィ、これはいつも龍之介とやってる鬼ごっことは違うんだ」

「終わったら遊んであげるから、待っててね……」

 シルヴィにそう言い聞かせ、双子は円の端と端に立つ。そうして地球に来てから教えてもらったじゃんけんで勝負をした。グーとチョキでシンの勝ちだった。

「よし、俺が最初だ」

「うん」

「条件はどうする?」

「天井があるから……上もアリで」

「了解。じゃあ、髪の毛以外に触ったら交代な」

「ん……」

 リィが頷き、シンが少し身を低くして構える。2人がやろうとしているのは、先程言っていたように、鬼ごっこのようなものだ。